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2026年4月29日 12:49

(後編)なぜExcelの管理表は使われなくなるのか —「誰でも使える」仕組みの作り方

(後編)なぜExcelの管理表は使われなくなるのか —「誰でも使える」仕組みの作り方

前回の記事では、『誰のためのデザイン?』から「使いやすさ」の4原則を紹介しました。

前回の記事はこちら

今回は、その原則を実際の業務ツールに当てはめてみます。

「Excelで管理表を作ったのに、誰も使ってくれない。」

中小企業の現場で、この悩みは驚くほど多く聞きます。

在庫管理表、顧客リスト、日報フォーマット、工程管理シート——最初は張り切って作るのに、1ヶ月もすれば更新されなくなり、気づけば紙のメモや口頭連絡に戻っている。

「うちの社員はITに弱いから……」と思っていませんか?

実は、世界的な名著『誰のためのデザイン?(The Design of Everyday Things)』を読むと、その原因がはっきり見えてきます。使われないのは、使う人のせいではなく、仕組みの設計に問題があるのです。


ありがちなExcel管理表の問題

まず、よくある「使われなくなるExcel」を見てみましょう。


パターン1:どこに何を入れるかわからない

列が20個以上あり、「備考1」「備考2」「その他」が並んでいる。新しい人が見ても、何をどこに入力すればいいか判断できない。


パターン2:入力してもリアクションがない

日報を毎日入力しているのに、上司は見ている様子がない。「これ、意味あるのかな?」と感じた瞬間、入力のモチベーションはなくなります。


パターン3:操作が複雑すぎる

「このセルは触らないで」「ここは関数が入っているから」「このシートは月末にコピーして」——ルールが多すぎて、怖くて触れない。


パターン4:間違えたら取り返しがつかない

関数を壊してしまった。データを消してしまった。元に戻せない。一度この経験をすると、二度とそのファイルを開きたくなくなります。


『誰のためのデザイン?』が教えてくれる4つの原則

ドン・ノーマンは、製品が使いにくい原因を4つの視点で説明しています。これをそのまま管理表に当てはめてみます。


原則1:アフォーダンス —「見ればわかる」を目指す

良い道具は、説明書がなくても使い方がわかります。ドアのハンドルを見れば「引く」とわかる。それと同じです。

ダメな例:

セルに「数量」とだけ書いてある。単位は?個数?ケース数?重量?

良い例:

「数量(ケース単位で入力)」と書いてある。プルダウンで選択肢が出る。

改善のコツ:

  • 列の見出しは「誰が見ても迷わない名前」にする
  • 自由入力をやめて、プルダウンや選択式にする
  • 入力例を薄いグレーで表示しておく

原則2:フィードバック —「ちゃんと伝わった」を返す

操作した結果がすぐに見えないと、人は不安になります。

ダメな例:

日報を入力しても、何も起きない。見てもらえているかわからない。

良い例:

入力すると自動でチャットに通知が飛ぶ。上司が「確認しました」と返す。

改善のコツ:

  • 入力後に自動で集計や通知が動く仕組みを入れる
  • 「入力してくれてありがとう」のリアクションを仕組みで作る
  • 週次で「入力データからわかったこと」を共有する

入力したデータが活用されていると実感できれば、自然と入力が続きます。


原則3:マッピング —「業務の流れ」と「ツールの構造」を合わせる

コンロのスイッチが横一列に並んでいて、どれがどの火口かわからない。これはスイッチの並びと火口の並びが対応していないから起きる問題です。

ダメな例:

シートが「Sheet1」「Sheet2」「データ」と並んでいる。どれを開けばいいかわからない。

良い例:

「①受注入力」「②在庫確認」「③月次集計」と、業務の順番で並んでいる。

改善のコツ:

  • シート名・フォルダ名は業務の流れに合わせる
  • 入力する順番と画面の並び順を一致させる
  • 一つの画面で一つの作業だけ完結させる

原則4:エラー防止 —「間違えにくく、間違えても戻せる」

ノーマンは「人は必ずミスをする」と断言しています。大切なのは、ミスを責めることではなく、ミスが起きにくい仕組みを作ることです。

ダメな例:

誰でも関数のセルを上書きできる。一度壊すと直せない。

良い例:

入力セル以外はロックされている。バックアップが自動で取られている。

改善のコツ:

  • 入力する場所とそれ以外を明確に分ける(色分け、シート分割)
  • 入力規則を設定して、間違った値を入れられないようにする
  • 定期バックアップの仕組みを入れる
  • 「元に戻す」ができる環境を作る

Excelの限界と、次の選択肢

ここまでの4原則をExcelに適用すれば、かなり改善できます。でも正直に言うと、Excelには限界があります。

課題

Excelの現実

複数人で同時に使いたい

ファイルがロックされて開けない

スマホから入力したい

画面が小さくて使いにくい

入力したら自動で通知したい

マクロやVBAが必要で難しい

データが増えてきた

動作が重くなる

誰がいつ変更したか知りたい

履歴が追えない

こういった課題が出てきたら、Excelを卒業するタイミングかもしれません。

代わりになるツールの一例:

  • Googleスプレッドシート — 複数人で同時編集、スマホ対応、無料
  • AppSheet — スマホで使える業務アプリをノーコードで作成
  • Googleフォーム — 入力画面を簡単に作成、集計も自動

大切なのは、ツールを変えることではありません。「誰でも使える仕組み」を設計する視点を持つことです。ツールが変わっても、4つの原則は同じです。


まとめ

管理表が使われなくなる原因は、ほとんどの場合「使う人」ではなく「仕組み」にあります。

チェックポイント

質問

アフォーダンス

見ただけで何をすればいいかわかるか?

フィードバック

入力した結果が活用されているか?

マッピング

業務の流れとツールの構造が合っているか?

エラー防止

間違えにくく、間違えても戻せるか?

今使っている管理表を、この4つの視点で見直してみてください。「使いにくい」と感じるポイントが、きっと見つかるはずです。


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