(前編)「使いにくい」は仕組みのせい — 『誰のためのデザイン?』から学ぶ業務改善のヒント

毎日の業務で、こんな経験はありませんか?
- 新しいシステムを導入したのに、誰も使わない
- 操作方法を何度教えても、同じ質問が来る
- 「結局、前のやり方のほうが早い」と言われる
これは、使う人の問題ではありません。
仕組みの設計の問題です。
アメリカの認知科学者ドン・ノーマンが書いた『誰のためのデザイン?(The Design of Everyday Things)』という本があります。世界中で読まれているこの本は、「なぜ人はドアの押し引きを間違えるのか」という身近な疑問から、良い設計とは何かを解き明かしています。
今回は、この本の考え方を中小企業の業務改善に当てはめてみます。

1. 「アフォーダンス」— 見ただけで使い方がわかるか?
ノーマンは「アフォーダンス」という概念を紹介しています。簡単に言えば、見た目が使い方を教えてくれるということです。
ドアにハンドルがついていれば「引く」とわかる。平らな板がついていれば「押す」とわかる。説明書がなくても、自然に正しい動作ができる。
業務に置き換えると:
あなたの会社の日報フォーマット、何も説明がなくても正しく書けますか?
記入欄に「備考」とだけ書いてあったら、何を書けばいいかわかりません。でも「今日困ったこと(あれば)」と書いてあれば、迷わず書けます。
ポイント: ツールや書類は「説明しなくても伝わる」を目指す。説明が必要な時点で、設計を見直すサインです。

2. 「フィードバック」— 操作した結果が見えるか?
ボタンを押しても何も反応がなかったら、不安になりますよね。「押せたのか?もう一度押すべきか?」と。
ノーマンは、操作の結果がすぐに見えることが大切だと言います。これを「フィードバック」と呼びます。
業務に置き換えると:
お客様がWebフォームから問い合わせを送った後、画面に何も表示されなかったらどうでしょう?「ちゃんと届いたのかな?」と不安になり、電話で確認するかもしれません。
「送信完了しました。2営業日以内にご連絡します。」という一言があるだけで、安心できます。
社内でも同じです。報告を上げたのに何の反応もなければ、「見てもらえているのかな」と不安になります。
ポイント: 「ちゃんと伝わった」「次に何が起きる」を、すぐに返す仕組みを作る。

3. 「対応づけ(マッピング)」— 直感的に操作できるか?
コンロのスイッチが4つ横に並んでいて、どのスイッチがどの火口に対応するかわからない——これはマッピングが悪い例です。
スイッチの配置が火口の配置と同じなら、迷いません。
業務に置き換えると:
管理表のシートが「Sheet1」「Sheet2」「Sheet3」と並んでいたら、どれを開けばいいかわかりません。「受注一覧」「在庫管理」「売上集計」と名前がついていれば、一瞬で目的のシートにたどり着けます。
フォルダ名、ファイル名、メニューの並び順。小さなことですが、情報の配置が業務の流れと一致しているだけで、作業スピードは大きく変わります。
ポイント: ツールの構造を、実際の業務の流れに合わせる。

4. 「エラーの設計」— 間違えても大丈夫か?
ノーマンは「人はミスをする生き物」という前提で設計すべきだと言います。大事なのは、ミスが起きにくく、起きても取り返せる仕組みです。
業務に置き換えると:
- 請求書の金額欄に文字が入力できてしまう → 数字しか入力できないようにする
- 大事なファイルを誰でも削除できる → 削除前に確認画面を出す
- 入力ミスに気づかないまま送信される → 送信前にプレビュー画面を挟む
「気をつけてね」と言うのではなく、間違えにくい仕組みを作ることが大切です。
ポイント: 「ヒューマンエラー」ではなく「デザインエラー」と考える。
まとめ:「使いにくい」を放置しない
『誰のためのデザイン?』が教えてくれるのは、シンプルなことです。
使いにくいのは、使う人のせいではない。仕組みのせいだ。
- 説明しなくても伝わるか?(アフォーダンス)
- 操作の結果が見えるか?(フィードバック)
- 直感的に操作できるか?(マッピング)
- 間違えても大丈夫か?(エラーの設計)
この4つの視点で、今の業務のやり方を見直してみてください。高い費用をかけなくても、ちょっとした設計の工夫で、業務はぐっとラクになります。
次回は、この4つの原則を使って「なぜ作った管理表が使われなくなるのか」を具体的に見ていきます。
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